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「小言じじい」を任せる

「小言じじい」を任せる

三十路軍団・アイシンの鈴木貴美一氏(中)……外山英明

 身長197センチの男が、カマキリのような長い手をぐるぐる回しながらコートを走り始めた。

 愛知県刈谷市にあるアイシンバスケットボール部の体育館。ストレッチをしていた後輩たちが少しばかり居住まいを正す。

 選手14人の平均年齢は29歳を超える。先発平均が30歳以上というのは、日本のスーパーリーグではこのチームだけ。そのなかでも、フォワードの主軸・外山英明(とやま・ひであき)(36)は、同リーグ最年長のプレーヤーである。

 「年長だから、で選手を選んでいるんじゃない。プレーの質で選んで、外山は先発」と、ヘッドコーチの鈴木貴美一(きみかず)(44)は語るが、プレー以外にも任せている仕事がある。「チーム・コミュニケーション」だ。

 この外山ほど曲折を経て、アイシンにやってきた選手はいないだろう。

 89年に熊谷組に入り、ゴール下の強さで新人王を獲得。2年目はチームを初優勝に導き、自らもMVPとなる。しかし、94年に熊谷組が休部し、移籍した大和証券からは99年に解雇された。00年に鈴木にアイシンに誘われた時は、神戸のクラブチームで細々とプレーしていた。

 トップリーグから再びスカウトされる……。外山は、にわかには信じられなかった。

 「鈴木さんから話があった時は、『冗談言って、いい飲み屋の情報でも聞きたいんでしょ』と答えたくらいですから」

 99年シーズン、アイシンはチーム史上最高の3位。それでも鈴木は「さらに上を狙うには、まだ壁がある」と感じていた。

 そして、こう考えた。

 選手側が、「はい、はい」と鈴木の意見を聞くだけの「一方通行」だからではないか――。

 「わかっているのか、わかっていないのか、的確なフィードバックがほしい。僕が、唯我独尊になる恐れもあるから」

 鈴木と外山のつきあいは、外山が学生スタープレーヤーだったころからだ。外山の魅力は何といっても、素直さとある種の厚かましさだった。

 指示がわからないときは「理解できない」と言い、コーチが間違っていると思えば、「ちょっと違うんじゃないですか」と直言する。

 鈴木は、外山に選手とコーチの間に立つ、「中間管理職」の仕事を求めたわけだ。

 そんな役割こそ、自称「小言じじい」の外山には、ぴったりだった。

 練習中、実に頻繁に若い選手に声をかける。落ち込んでいる選手を見つけるうまさも、飲み会を企画する回数も、いちばんなのである。

 もちろん、鈴木と談笑する時間は最も長く、鈴木のことを面前で「きみ(貴美)さん」と呼べるのも、外山だけである。

 鈴木はそれをありがたがる。

 「指示が一方通行になると、選手が考えたプレーをしなくなる。そこを外山が、若手にかみくだいて伝え、応用させる」

 外山を起点とした円滑なコミュニケーションが、チームワークにつながっていくのは自然の流れだった。

 02年シーズンの初優勝時、MVPに選ばれた後藤正規(まさき)(33)が「本当のMVPは外山さん」と公言したことが、バスケ界の有名なエピソードになった。

 外山のプレースタイルも大きく変わった。「小言じじい」を楽しんでいるうちに、外山の言によれば、「省エネバスケ」に脱皮したという。

 「このチームには、点を取る選手がいっぱいいるから、僕が自分から動いて起点にならなくてもいい。楽なんです」

 守備は頑張るが、攻撃では半分くらい休むという。相手の裏をかき、大事な局面だけ動いてミドルシュートを決める。02年の3ポイントシュートの成功率は、チーム一の48%である。

 現在の03年シーズンも、外山はほとんどの試合で二けた得点を記録している。

 鈴木は、外山を先発で使い続けることで、「バスケットは頭だ」というメッセージをも、チーム全体に発しているのかもしれない。=敬称略


(石川雅彦)


フォワード・外山英明。東京都出身。89年に青山学院大を卒業し、熊谷組でプレーを始める。197センチ、85キロ

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